刈安とは山野に自生するススキに似たイネ科の多年草で、刈り取が容易だったのでこの名がつけあれた。一般に言われている刈安は「近江刈安」のことを指す。その刈安を使って染められたのがこの色です。ススキの類は古くから黄色染めに用いられてきましたが、なかでも刈安は愛用されました。

『延喜式』にみえる深黄・浅黄も刈安で染められていて、緑色系はたいてい藍と黄蘗（きはだ）によって染められますが、深緑だけは藍と刈安とでそめられています（赤味を含まないので、藍と混ぜることで鮮やかな緑を染めることができる）。刈安染は堅牢性もあり、黄染の最も代表的な染料でした。近世になって滋賀県の近江刈安が品質もよく有名になりました。また、八丈島の黄八丈の織物には八丈刈安（小鮒草）が使われています。

緑色の染色は、かなり長い間（合成染料が登場するまで）「刈安＋藍」で行われていました。その材料である近江刈安は各地で栽培されていましたが、現在では近江刈安の近縁種である「こぶな草」が八丈島など特定の地方でわずかに栽培されているに過ぎない。