梅若の涙雨(うめわかのなみだあめ)

謡曲「隅田川」の主人公梅若の忌日とされる旧暦3月15日に降る雨。梅若は、人買いにかどわかされてひどい仕打ちを受けた後、隅田川のたもとで亡くなるが、土地の人により塚が作られ供養された。哀惜の涙雨。

春雨(はるさめ)

春、音もなくけぶるようにして細く降る雨。「小糠雨(糠雨)」とも言う。戯曲『月形半平太』の台詞「春雨じゃ、濡れて参ろう」などで馴染の情景。

菜種梅雨(なたねづゆ)

菜の花の咲く頃の長雨。「春霖(しゅんりん)」とも言う。本州南岸に停滞する前線によるもので、北日本には及ばない。「霖」は長雨を意味し、秋の長雨を「秋霖(しゅうりん)とも言う。

薬降る(くすりふる)

旧暦5月5日の午後の刻(正午前後)に雨が降ること。この日は薬草を取る習慣があったことから「薬日」と呼ばれ、この日の雨が竹の節にたまった「神水しんすい」を用いた薬はよく効くとされた。

卯の花腐し(うのはなくたし)

旧暦5月、梅雨に先駆けて降る長雨。その頃に満開を迎える卯の花(うつぎ)を朽ちさせるほど長く降り続けることの意味。

狐の嫁入り(きつねのよめいり)

日照り雨。照っていながら雨が降ること。狐火がたくさん連なって、嫁入り行列の提灯のように見えることも言う。

虎が雨(とらがあめ)

旧暦5月28日に降る雨。富士の裾野で、父の仇を討った曽我十郎祐成(すけなり)、五郎時致(ときむね)兄弟だが、まもなく命を落とした。兄の恋人の遊女・虎御前が、命日であるこの日に流す涙雨の意味。

梅雨(つゆ)

夏至の前後、梅の実が熟する季節に降り続く長雨。「露けき」時節、あるいは「潰(つい)ゆ」の意味からなど語源は他説ある。

酒涙雨(さいるいう)

旧暦7月7日に降る雨。織女(しょくじょ)と牽牛(けんぎゅう)が逢瀬の終わりに流す涙、あるいは雨で会えずに流す泪とも言われる。6日もしくは7日に降る雨を「洗車雨(せんしゃう)」とも呼ぶ。ふたりの乗る牛車を洗う雨。

御精霊雨(ごしょろあめ)

九州南部で盆に迎える先祖の霊を御精霊様(おしょろさま)と呼ぶことから、新暦8月13日の夕方から16日早朝にかけて降る雨をこう呼ぶ。特に旧盆の16日の雨を「洗鉢雨(せんぱつう)」とも言う。

時雨(しぐれ)

晩秋から初冬にかけて、晴れていた空が急に暗くなって、降っては止みを繰り返す通り雨。京とや日本海側に近い山間部でよく見られる。「朝時雨」「片時雨」「北山時雨」など、さまざまに用いられる。

秋黴雨(あきついり)

秋の長雨。「梅雨に似た気圧配置がもたらし、前線は北から南へと移動する。「秋入梅(あきついり)」とも書く。

氷雨(ひさめ)

霙(みぞれ)や雪に変わる前の凍るように冷たい雨。元来は(ひょう)を示す夏の季語とされてきたが、現在は冬の季語としても使われる。

寒九の雨(かんくのあめ)

寒の入りから九日目に降る雨。この日に雨が降ると、その年は豊作との伝えがある。またこの日は最も水が澄むとされ、汲んだ水を服薬に、あるいは薬そのものとして飲む地方もある。

四温の雨(しおんのあめ)

寒い日が三日続いた後に暖かい日が四日、それを繰り返して徐々に春を迎える「三寒四温」の時季に降る雨。

 
 

この記事は自由国民社「現代用語の基礎知識」別冊より引用しています