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  きものトラブル原因究明
 

Q11 箪笥の中にしまっておいた銀糸使いの名古屋帯が黒く変色していた 
  
A11
帯が黒く変色したのは、緯糸として使用された銀糸が保管中に他の吟硫物質と反応し硫化変色 (箔ヤケ) したためと考えられ、保管の仕方に問題があったといえます。箪笥のなかという一般的な保管方法で変色の原因となる吟硫物質として考えられるものは、


① 石油ストーブから出る燃焼ガス 
② 輪ゴムやゴムベルト
③ 粗製の紙類 
④ 硫黄系漂白剤の残留した生地(ウール) など
が考えられます。


対策としては、こまめに虫干しをし箪笥の中の空気を入れ替え、ゴム製品やウールの着尺やコート、ショール腰紐などのウール製品、粗製の紙類と一緒に収納しない事です。
 

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Q12 

箪笥に保管中、着物に黄褐色の斑点状のシミがでていました
  
A12
これはカビによるものです。カビは条件がそろうとどのようなものにも簡単に発生し、次々と広がってゆきます。カビが発生する条件は


① 温度
② 湿度
③ 栄養分(繊維も栄養分になる)
④ 酸素(ほとんどのカビは酸素がないと生育できない)
があります。


カビは保管中に発生するのがほとんどで、その意味から ① カビ臭 ② シミの打ち合い現象(対象形)の有無、などは判断の大きな決め手になります。

カビ発生防止に防カビ加工を行う事もありますが、やはり決めては常に生地を乾燥した状態で保管する事。大切な着物をきれいな状態で長く使うにも虫干しを行うよう心がけてください。
 

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Q13 箪笥にしまって着物を出して見ると、着物の八掛がたるんで裾から見えています。表地が縮んだのでしょうか 
  
A13
箪笥で保管中にこのような状況(収縮)が発生したとすれば、整理工程での表地のテンション(張力)の掛け過ぎ(引っ張りすぎ)が疑われます。
仕立てられた着物では仕立て後の保管中に発生する事が多く表地と裏地(八掛)の収縮差 から結果として裏地にたるみが生じます。


保管中、何らかの原因(水分・湿気など)が加えられたとき、テンションのかけすぎがあった場合にはその応力を緩和する方向に作用(緩和収縮)します。絹は織物表面に発生する小ジワを除去するために、ある程度生地にテンションをかけるのは避けられません。保管中に縮むということはやはりテンションのかけすぎを問われても仕方ありません。


その他、撥水加工をしているのに縮んだということを良く聞きますが、水をこぼしたなどの際には撥水効果はありますが、蒸気や熱湯などの水分は縮みを十分防ぐ事はできません。
 

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Q14着物のシワが取れないという苦情を受けました。生地が悪いのでしょうか 
A14
着用ジワは一概に生地が悪いとは断定できません。きものの素材としての白生地が、一越や古代縮緬などは伸縮性に富み収縮しやすく、一方変り無地縮緬などは収縮しにくく、シワの回復力に乏しいという生地の特性が違うためです。


絹和服の防シワ性は、吸湿量の増加にしたがって悪くなる傾向があります。たとえば、梅雨時、夏季の多湿時、着用時に汗を吸湿したときなどにシワは一層つきやすく、取れにくい傾向があります。特に強いシワが発生しているきものの場合、汗によるシミ跡が紫外線下で認められる事が多いといえます。


最近では樹脂加工をしたシワの取れにくい生地も見かけます。樹脂加工はしみがつきにくい、収縮しにくいという付加価値が目的の撥水加工の一種です。
 

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Q15 1回着用しただけなのに、着物の八掛に毛玉ができてしまいました 
A15
トラブルとまではいかないかもしれませんが、最近急増している事例として、八掛の裾付近に発生する毛玉(ピリング)があります。2,3回でピリングができたということは比較的多くあります。


ピリングが発生する前に、まず摩擦により、生地に毛羽が発生しますが、八掛全体に毛羽が見受けられるようなら、糸質あるいは加工工程に問題があったと考えられます。

繊維に関連する用語として、スレ、毛羽、ラウジネスという言葉があります。簡単に言えば、スレは絹繊維の表面をぬれた状態で摩擦することにより発生するもので、毛羽は、乾いた状態で摩擦することによって発生します。


ラウジネスは絹繊維の先天的な分離繊維(セリシン中に含有)によって発生すると考えられています。今回の場合はおそらく、ラウジネスと考えられます。
 

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Q16 着用後の着物をしまうとき、背中のシワに沿った変色に気づきました
A16
この変色の原因として考えられるのは、ゴムベルトやウールの腰紐に含まれる硫黄成分の還元作用による変色、または、きものの保管の際、はさんで収納している紙に含まれる硫黄成分が染料に影響を与えているために発生した変色です。


以前あった変色事例ですが、和装用小幅の反物でワンピースを作り、それをハンガーに掛け、洋服ダンスに入れて保管していたところ、ドレープの凸部が変色したというものがあります。このワンピースの横にウールのセーターがかけてあり、ウールに含まれる硫黄成分の還元作用に起因する事例でした。


ウール製品ときものは、絶対に一緒に保管しないことです。
 

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Q17 きものの肩から袖にかけて、雨にぬれたところが、濃い斑点状のシミになってしまいました
A17
これは着用中に雨に降られ、斑点状のシミになったウォータースポットと呼ばれる事例です。
①染料や生地上に残留していた薬剤が移動してシミになる。
②ぬれた部分が収縮し、部分的に光沢異常を生じる。
などがあります。


今回の場合は、②によるもので、雨にぬれた部分の局部的な収縮による光沢異常で、収縮以前とは異なった光沢を示すため、発生するものです。一越や古代縮緬などの強撚糸使いの収縮しやすい生地で多く発生します。

直し方は、生地全体を水につけるか、部分的に蒸気を当てて、再整理することで修正が可能です。
 

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Q18振袖の肩付近の胴裏に地色らしい色が付着しています。汗をかくような場所ではないと思うのですが</a>
  
A18着用時の汗で、着物の胴裏の脇や背の部分に地色が泣き出したというトラブルはありますが、汗が付着するとは考えられないところが色泣きしているのが問題です。


色泣きが発生している部分の表地に地色の上にベタ箔(箔を一面に貼り付けた金彩加工)の柄がありました。着用中に身体から出る湿気は、肌着から長襦袢、胴裏、表地を通って外気に拡散していきますが、そこにベタ箔があると湿気の流れが遮断され、部分的に加湿の状態が生まれます。つまり、通気性不良による色泣きです。特に最近の地色が濃い着物の場合は、染料が必要以上に付着していることがあり、そこに湿気が多くあたると、色の泣き出しとなってにじみが現れます。
 

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Q19 絽の喪服から色が落ちて、長襦袢についてしまいました
A19
通常、堅牢度のしっかりとした、喪服からの色落ちは極まれで、たいていの場合、背伏せからの色落ちが考えられる事例です。


単では、背伏せと長襦袢が直接接します。そのため、背伏せにも高い湿潤堅牢度が必要です。絽の喪服では、白の長襦袢を着ますので、背伏せに黒などを用いず、白を使うとよいでしょう。
 

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Q20着物をドライクリーニングに出したら、色が薄くなったような気がします。クリーニングで色落ちしたの
A20
ドライクリーニングによる色落ちというケースはまれにありますが、和装品の場合、ほとんどが酸性染料、直接染料で染められており、ドライクリーニングの溶剤ではほとんど色落ちしません。


クリーニング出の汚れの除去により前より色が美しくなり(明度があがり)、色落ちしたと思ってしまうケースがありますが、この場合残り裂との比較や試験を行う必要があります。


ドライクリーニングで多少とも色落ちする場合、周りの湿度や、繰り返し洗いが行われたことによる生地からの水分の持込などで、ドライクリーニングで使用する有機溶剤中の水分含有量が多くなったため、色落ちに結びつくケースがあります。


最近目に付く事例として、着用後、留袖の衿に付いた汚れを除去するために、ベンジンを用いたところ、比翼に地色が泣き出したという例があります、ベンジンなどの溶剤に対して、酸性染料や直接染料はほとんど溶解しないはずですが、地色が濃く、しかも、生地に柔軟加工が行われている場合は、それらの薬剤の疎水成分に多量の染料分子が吸着され、それがベンジンなどの溶剤中に泣き出すことがありますので、目立たないところで試してみることも必要です。
 

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この記事は「婦人画報社」1995年版・2004年版から引用しています</font /></font />