Q6 | 1年前に購入した白生地が黄変していました。 | |
A6 | 白生地が黄変する原因はいくつかあって特定する事は困難です。絹質の変化によることもあれば、白生地を生産するときの加工剤の影響、また、白生地の保管環境によっても変色します。それを修正できる場合ともとの白度まで復色できない場合があります。 白生地が黄褐変する原因は加工剤(残留物)だけでなく、次のような保管環境が大きく影響します。 ① 太陽光線や蛍光灯の影響 ② 蒸れる状態の影響(白生地の重ね積は内部が湿度によってぬくもりを持つ) ③ 暖房ガスやタバコの煙の吸着の影響 ④ 昼と夜の温度差のある部屋(暖房や冷房の部屋、居間)での湿度の影響などです。 虫干しするとき、白生地にも風を入れてください。 | |
Q7 | 喪服の帯の全面に白い粉が発生しています | |
A7 | これは粉吹きと呼ばれるものです。粉吹きの特徴として、次の現象が挙げられます。 ① 先染品(特に喪服帯に多い)に発生する。 ② 寒い季節に発生する。 ③ 白い結晶状のものが発生する。 ④ この結晶状のものは、熱(ドライヤー程度の熱でよい)をかけると溶解する。 ⑤ この結晶状のものは、水に不溶で石油溶剤に溶解する。 粉吹きが発生する理由については、精錬で使用した石鹸成分が脂肪酸(水に不溶性)に変り、温度が低くなると再結晶するという説がありますが、現在のところ、十分に解明されていません。 | |
Q8 | しまっておいた留袖を取り出したら、金彩が包んでいたたとう紙に付着して取れてしまいました | |
A8 | 原因は、保管中に使用した防虫剤と、金彩のバインダー(接着剤)が反応して軟化し、それが打ち合い状態(重ねて置かれた布などの柄が他面にもくっついてしまう事)でたとう紙に付着したもの、つまり防虫剤による金彩剥離と考えられます。 絹の着物は、精錬前の生糸と違い、精錬後の絹糸は、虫が食べる害が少ないものです。したがって仕立てあがった着物の場合には、ウールの商品ほど多くの防虫剤を使用する必要はないと思います。また、違う種類の防虫剤を一緒に使う事は絶対に避けるべきです。 | |
Q9 | 帯を箪笥から出したら、たたんだ状態で柄が密着し、無理にはがさないと取れません | |
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A9 | 原因は、柄部分に使われていたラッカー箔が保管中に使用していた防虫剤と反応して溶出し、それが重なり合って密着し、再硬化したものと考えられます。 これは防虫剤によるラッカー箔の溶出です。 帯様の模様箔(柄箔)にはラッカーで色柄を表現したものが使われています。ラッカー箔と呼ばれるものがまさにそれです。 ラッカーはシンナーで容易に溶けることはよく知られていますが、防虫剤のガス成分においても、その濃度やガスに触れる時間によって、徐々にラッカーの軟化、溶出が進む事があります。 このトラブルの予防法は多量の防虫剤を使用しないことです。 | |
Q10 | 着物を箪笥から出したら、ぼやけたように変色していました。 | |
A10 | このようなトラブルの多くは、箪笥に入れてから相当長い期間を経過しているもので、変色の原因は箪笥の中に蓄積された酸化窒素ガス(光化学スモッグの原因)や亜硫酸ガス(大気汚染部室のひとつ)、暖房器具の燃 焼ガスなどが生地に吸着し、染料色素を分解するためと考えられます。 つまり、ガスによる変色です。家屋の密閉構造など住宅事情が変化した比較的最近に多く見られるトラブルです。多くの場合、保管中のたたみ目の外側(隙間があってガスの出入りがしやすいところ)が変色します。 防止対策として、虫干しをこまめに行い、箪笥の中の空気を入れ替えしていく方法が良いでしょう。 | |
この記事は「婦人画報社」1995年版・2004版から引用しています |