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Q21 | きものをクリーニングに出したところ、柄の金彩が取れて帰ってきました |
A21 | ドライクリーニングに使用された溶剤と金彩のバインダー(接着剤)が不適合だった可能性、つまり、ドライクリーニングによる金彩剥離と思われます。しかし、現在ではクリーニング溶剤の研究により、このような事故の発生率が減少しています。
クリーニングによる金彩剥離ではクリーニング溶剤やバインダー関連の故障ばかりでなく、もともと接着力が不足している場合もあります。たとえば、金彩が生地に密着せず浮き上がっている場合では軽い摩擦によっても剥離現象が見られます。
最近では何でもすぐにドライクリーニングですが、クリーニングに頼りすぎず、専門の悉皆屋さんに相談して、適切な対処をしてもらいましょう。 |
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Q22 | 堅牢染めで染色したのに、日焼けしてしまいました |
A22 | 実際に変色しているとすれば、取り扱い条件が過酷であったか、堅牢度があまりよくなかったのかのどちらかです。染色堅牢度とは染色された色がどれだけの使用条件に耐えるかという尺度です。 まず、堅牢染をしたきものだからといって、光によって絶対変色しないということはないということを理解しておく必要があります。例えば、耐光堅牢度が4級の着物であっても、展示会などで長時間光の影響を受けたりすると変色します。 線食品の色に悪影響を与える原因は、数多くありますが、その代表的なものとして、
①日光→太陽光線の紫外線によって、染料が分解し、変色、退色を起こします。曇りの日や蛍光灯によっても変退色することがあります。 ②洗濯→汚れを落とす洗濯によって、色まで洗い落として退色したり、染料が流れ出て白場を汚すことがあります。 ③汗→着用時に人間のかく汗によって染料が泣き出したり、変退色することがあります。人間の汗の成分は、個人によっても、また、同一人物であっても発汗時の状態により違い、染料に対する影響もそれぞれ異なります。 ④水→染色物が水にぬれて放置されたとき、変退色したり、白場を汚したりすることがあります。 ⑤摩擦→白い布と染色物を摩擦したとき、染色物の染料(特に藍など)は白い布に移ることがあります。着物を着たとき、白足袋が汚れたり、下着に色が移ったりするのが、この例です。その他、酸やアルカリ、有機溶剤、塩素、酸化窒素ガスなど、要因は種種あります。例えば、日光に強くても選択には弱いなど、一つ一つによって異なります。
堅牢度評価も、洗濯堅牢度、変退色堅牢度、汚染堅牢度、耐光堅牢度などがあり、染色堅牢度試験といえばオールマイティーな評価であるかのような誤解を生んでいるようです。注意してください。 |
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Q23 | 娘の嫁入り用に喪服を作ったところ、私の喪服に比べて黒が濃い用に見えます |
A23 | 現在の喪服では、黒の色がより濃く見える加工(深色加工)した製品が増えています。ご質問の喪服もこの加工がされているものと思われます。 一般に物体は当たった光の反射量が多いほど白く見え、逆に少ない場合は黒く見えます。したがって、反射光量を少なくすれば(反射率を下げれば)染色物の色を黒く(濃く)見せることができます。 染色物は濡れると色が濃く見えますが、染色物の表面に低屈折率の被膜を作ると、これと同様の現象となり、黒染品では〝カラスの濡れ羽色〟ということになります。 実際加工したものと未加工のものでは、色の濃さという点ではっきりと差が認められます。この深色加工に対し業界では賛否両論あります。 消費者サイドに立った取り扱い注意点などを記載した文章がなく、知らないために発生する事故が増加しているのも事実です。
そこで、深色加工のメリットとデメリットを記載します。メリットはその黒色の深さ(濃さ)といってよく、この加工の最大の特徴といえるでしょう。 デメリットとしては、 ①被膜によって反射率を下げるため、深色加工前の記事に不純物がある場合には、深色加工用樹脂の付着量が変わり、その部分にムラが生じやすくなります。 ②深色加工を施した着物にシミが付いたからといって、水や溶剤(ベンジンなど)で処理すると、被膜に影響を与え、色が変化して見えます。(この場合専門家に任せます) ③深色加工に使用されているシリコン系樹脂は撥水性を有し、従来の方法では、紋上絵が入りにくい状態になります(最近では浸透剤の使用によって紋上絵を行っています)。 ④シリコン系樹脂を多用すると。経と緯の糸の間の摩擦抵抗が低下し(滑りやすくなり)、経糸がずれる、いわゆるスリップ(目寄れ)現象が生じやすくなります。 |
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Q24 | 衿についた汚れを取ろうとしたところ、白けてしまいました。色が落ちたのでしょうか |
A24 | 夏物の着尺や喪服で、帯があたる部分やシミ落としをした箇所が白くなり、色が落ちたのではないかという苦情を良く聞きます。このような場合の白けの原因は、シミ落とし時に発生したスレの部分の光の乱反射とスレの細繊維化された繊維の光の透過によるものと考えられます。 湿らせた布で生地を押さえても色が移ることはありません。このような白けた部分の顕微鏡で観察しますと、スレが観察されます。 スレのトラブルは生地の表面が湿潤状態で摩擦されると発生するものです。また、摩擦現象は、両面から同じ場所が擦られることはあまりなく、このことから、スレは片面に発生するようです。このことからスレはあらゆる場面で起こりやすく、注意が必要です。 スレの防止は、スレの発生しやすい湿潤状態、特に汗に対する対策を心がけましょう。不幸にしてスレが発生したものは、専門店に持ち込んでスレ直しを。 |
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Q25 | 衿の部分のお色が落ちてしまったと、消費者から抗議を受けました。どう見ても消費者が行ったシミ取りが原因だと思うのですが |
A25 | 色落ちといわれる部分を顕微鏡で観察すると、スレが確認されます。また、紫外線下でその部分を観察しますと、その周辺に濡れ跡が認められます。これは着物の着用汚れを除くために濡れタオルのようなもので擦ったりしたときできたと思われます。プロのシミ落としでは極端なスレを発生させたり、濡れあとを残すようなことはまずありません。スレは絹繊維が濡れているか、湿っている状態で表面を擦ることによって発生します。知識不足から起きるトラブルですので、しっかり、情報を確認してください。 |
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Q26 | 無地の着物の紋の周囲に輪を描いたような変色がありましす。 |
A26 | この事例は抜き紋を行う際に使用した抜染剤の水洗い不足と考えられます。紋を抜く前に、紋洗いといって染色工程での汚れを取り除き、紋を白くさせる目的で、酸性亜硫酸ソーダ、亜鉛末および酢酸などを混ぜた三品改良液などの抜染剤を使用します。三品改良液は、塗布した後、蒸熱による還元作用で抜染し、その後よく水洗いします。しかし、水洗いが不十分な場合は、抜染剤が生地上に残留し、水とともに移動した抜 染剤は紋から少し離れたところにきわづいた形で残り、これ変色の原因です。 そのほか、紋洗いに関連し、紋の周辺だけが元の地色で、それ以外の地色が変色している事例を見かけることがありますが、この現象は、浸染などの水洗い不足によることが多く、生地上に残留したアルカリ成分が、紋洗いした部分だけ除去され、それ以外の部分で、経時的に変色したものです。 |
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Q27 | 無地の着物を染め替えたところ、ムラになってしまった |
A27 | 絹繊維は、染色しやすい繊維として知られていますが、逆にいえば、シミがつきやすい繊維ということになります。そのため撥水加工が普及しましたが、これがこの原因、撥水加工による染ムラです。問題は「撥水加工がしてある」という情報を業者に伝えずに染め替えに出したということです。 撥水加工の特性を理解していないといろいろな問題が生じます。もちろん撥水加工の撥水性はどんな条件下でも効果を発揮するわけではなく、たとえば、沸騰水や界面活性剤などが含まれている溶液中では、比較的簡単に水分を吸収します。このため、染め替えの脱色工程ではきれいに脱色でき、撥水加工剤も脱落したかのように勘違いしがちですが、熱が掛かると発水性が発現されます。つまり脱色工程では撥水加工剤は除去できません。 そのほか、撥水加工がしてあるのに縮んだというクレームを聞くことがありますが、撥水加工は、熱湯や蒸気などに対しては、水分に対するほどの効果はなく、加工しているから、まったく縮まないということなどありません。 |
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Q28 | 成人式後のパーティーのとき、静電気で着物の裾がまつわり、つき、困ってしまいました |
A28 | 一般に合成繊維は帯電しやすいことは知られていますが、絹のような天然繊維でも静電気は起こります。 静電気の発生には多くの要因が考えられます。例として、 ①着用時の湿度環境(主に乾燥状態) ②他素材との関連(合成繊維などとの併用、合成繊維カーペットなど) ③素材自体の吸湿性 などがあげられますが、主として空気の乾燥する冬季の晴天の日に多発します。静電気の発生は、これらの三つの条件がうまく揃って初めて起こるもので、単純に着物の素材だけを取り上げて議論できません。逆にいえば、過去に静電気が発生して困った着物でも、次の着用時に必ず静電気が発生するとは限りません。 一時的な効果ですが、市販の帯電防止スプレー(できれば無臭性のもの)を長襦袢や胴裏に軽く吹きつけることで十分対応できます。 |
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Q29 | 組紐に使用されている銀糸が変色しているように見えます |
A29 | 金銀糸は、ポリエステルフィルムにアルミを真空蒸着し、その上から透明の着色保護膜で覆い糸状に裁断したものです。このような症状の多くの場合、金銀糸特有の金属光沢がなくなっています。顕微鏡で観察すると、透明のポリエステルフィルムだけが見え、アルミ抜けを起こしています。また、この部分に水滴を落としてPHを測ると強い酸性になっていることがよくあります。何らかの酸性物質によって、銀糸のアルミが溶けてなくなってしまったものと思われます。 アルミは酸だけでなく、アルカリでも溶解する性質があり、たとえば、銀通しの生地で作られた着物の脇に付着した汗によってアルミ抜けが発生したこともあります。また、カビの分泌する強い酸でアルミ抜けがおこることもあります。 |
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Q30 | 浴衣を着ようとしたら簡単に破れてしまいました。生地が悪いのでしょうか |
A30 | このようなトラブルは繊維の脆化(ぜいか)といい、生地が非常に弱くなっていることです。原因はいくつか考えられますが、酸またはアルカリが検出されることが少なくありません。破れた箇所に水滴を落とし、PHを測ると強い酸をしめしたり、白地の部分(白場=防染してある部分)は中性を示す場合は、次の原因が考えられます。 硫化染料で濃い地色を染めた場合によく見かけるトラブルです。これは染色後の水洗いが不十分なために、染料中の不純物としての硫黄が生地に残留し、綿繊維を脆化させたということです。 その他の原因による脆化としては、カビによる繊維の脆化がほとんどです。紫外線下で蛍光性が現われることで確認できます。 木綿の手拭や風呂敷などで、色の濃いものや鮮やかな色のものは、必ずよく水洗いしてから収納することをお勧めします。 |
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| この記事は「婦人画報社」1995年版・2004版から引用しています |